歴代天皇の実像史論
二千年近い歴代天皇の実像について、私は十数年前、拙著『歴代天皇の実像』(モラロジー研究所、平成21年)を刊行した。それは「宮廷文化」の形成史とも関係が深いので、内容に修訂を加えて、毎月一回ここに転載させて頂く。
なお、各回の末尾に近年の研究動向を、学友の久禮旦雄氏(現・京都宮廷文化研究所代表)に補注の形で加筆してもらった。あわせて通覧されたい。
令和4年(2022)4月10日記
〈付記〉
以下の連載に掲載する挿図の多くは 昭和8年(1933)皇太子明仁親王の降誕奉祝記念に企画し十数年かけて完成された「国史絵画」の普及版 所功編『名画に見る国史の歩み』(平成12年、近代出版社)による。
-
第11回 壮大な天平文化を具現された聖武天皇
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
正倉院宝物(御物)の迫力 かつて30年余り京都産業大学に勤めていたころ、毎秋の楽しみは、「文化の日」前後、奈良国立博物館で催される「正倉院展」を見に行くことであった。 そのうち、とりわけ印象に残っているのは、平成20年(...
-
第10回 日本的な律令体制を確立された天武・持統両帝
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
皇室の危機を直視する 今上陛下の長女として誕生された敬宮(としのみや)愛子内親王が、令和3年(2021)12月1日に「成年」となられたことを、心からお慶び申し上げたい。 ただ、現行の「皇室典範」によると、敬宮さまには皇位...
-
第9回 画期的な「大化改新」を主導された天智天皇
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
聖徳太子の改革の効果と変化 近ごろ世界の実情を見ていると、いくら日本人が平和を願い友好を求めても、国際的な争いに巻き込まれ戦わざるをえない危険な事態がないとは言い切れない。とすれば、お互いに心を合わせて、内外の難問を毅然...
-
第8回 推古女帝と摂政の聖徳太子による協力統治
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
「和を以て貴しと為す」を世界に 「東京オリンピック2020」は、コロナ禍の続く中、一年遅れで開催されたけれども、内外の選手たちが大いに活躍し、多くの感動を生み出した。とくに日本発祥の「JUDO」や「KARATE」が男女と...
-
第7回 仏教を慎重に受容された欽明天皇
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
「文明の衝突」は不可避か かつてハーバード大学教授S・ハンチントン博士著『文明の衝突』(邦訳は平成10年刊)を読んで、色々考えさせられたことがある。 同氏の文明圏論を私流にまとめ直せば、現代の世界は①中国などの儒教文明圏...
-
第6回 皇統の断絶を救われた継体天皇と手白香皇后
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
今も難しいお世継ぎ問題 皇室の皇統は、皇位の継承有資格者が居られなければ続いていかない。その継承者は古来「男系の男子」が原則(男系の女子も公認)とされてきたが、現在の該当者は僅かしか居られない。これは20年来の難題である...
-
第5回 雄略天皇=倭王武の内政外交
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
「中華帝国」と周辺諸国との関係 ヨーロッパでは、10数年前(平成16年)から「欧州連合(EU)」に新しく中東欧10か国が加わり、全25か国の大所帯となった。面積は日本の10.5倍強(約400万平方キロメートル)、人口は日...
-
第4回 神功皇(太)后による遠征と摂政
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
この令和4年(2022)5月1日、今上陛下が第126代の天皇として践祚されてから4年目を迎えた。コロナ禍の続く中にも、両陛下はお揃いでオンラインなどを活用しながら、国家・国民のために御精励を賜っている。この天皇を日本国・...
-
第3回 倭姫命と日本武尊の歴史的役割
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
世界的に注目される「コメは命」 かつてゴールデン・ウィークに岐阜の田舎へ帰省中、わずか1週間で家の周囲はみごとな水田となり、ほどなく美しい若緑に染めあげられた。皇居の中にある吹上の御田畑でも、天皇陛下みずから4月上旬に米...
-
第2回 崇神天皇のもとで国内統一に前進
- 宮廷文化歴訪
- 歴代天皇の実像史論
京都宮廷文化研究所特別顧問 所 功
皇位の継承をめぐる争い 初代の天皇(大王)として即位された神武天皇の理想は、大和に宮都を開き「八紘(あめのした)」を「宇(いえ)」のように纏めてゆく、いわば〝家族国家〟を建設することであった。しかし、それが直ちに実現され...